人手不足が慢性化している清掃・ビルメンテナンス業界では、「求人を出しても応募が来ない」「採用単価が上がり続ける」「入社しても定着しない」といった悩みが増えています。
そこで今、注目されているのが、在留資格「特定技能(ビルクリーニング分野)」を活用した採用です。
「特定技能ビルクリーニングとは何か」「採用に向けて何を準備し、どこでコストを抑えられるか」を、実務目線で分かりやすく整理します。
導入:採用コスト削減に特定技能ビルクリーニングが選ばれる理由
求人広告や短期アルバイト中心の採用は、応募数が景気・地域・時期に左右され、採用単価が読みにくい傾向があります。
一方、特定技能では試験合格者を採用するため、一定の技能水準を前提に計画を組みやすくなります。
また、在留資格の枠組み上、就労目的が明確な人材が多く、仕事を続ける意欲が高い方と出会いやすい点も特徴です。
結果として「採用→教育→離職→再採用」のループを減らし、総コスト(採用費+教育費+欠員損失)を抑える設計がしやすくなります。
採用コストの現状と課題(人材不足・清掃業の背景)
清掃業界は、早朝・夜間帯の勤務、現場が分散しやすいこと、体力面の負荷、賃金水準の地域差などが重なり、応募を集めにくい職種の一つです。
その結果、求人媒体への掲載回数が増え、応募単価・採用単価が上がりやすくなります。
さらに、未経験採用が中心だと、現場OJTの負担が増え、教育中の品質のブレやクレーム対応が発生し、間接コストも膨らみがちです。
欠員が出ると現場責任者が穴埋めに入り、管理業務が回らなくなるなど、機会損失が連鎖することもあります。
こうした「採用費だけでは見えないコスト」を抑えるには、計画的に採用できる仕組みづくりが欠かせません。
特定技能を活用して期待できる効果(定着・品質・コスト削減)
特定技能の活用で期待できる効果は、主に定着率の改善、品質の安定、採用コストの平準化です。
特定技能(ビルクリーニング)は、評価試験などで一定の技能を確認した人材を採用できるため、ゼロから育てるより立ち上がりが早く、現場の負担を抑えやすくなります。
また、就労目的で来日・在留するため働く意思がはっきりしており、生活面の支援を整えるほど定着につながりやすい傾向があります。
採用面では、紹介会社・登録支援機関を活用することで採用単価は発生しますが、採用の再現性が高まり、欠員補充の“緊急コスト”を減らしやすくなります。
この記事の読み方:導入から実務・定着までの流れ
本記事は「制度理解→採用手続き→現場運用→費用最適化→リスク回避→実務チェック」の順で読める構成です。
まず、特定技能ビルクリーニングの対象業務や1号・2号の違いを押さえ、次に受入れ要件や試験、在留資格手続きの流れを整理します。
そのうえで、現場で任せられる作業範囲、研修設計、管理体制の作り方を解説し、最後にコスト試算・助成の考え方、トラブル回避策、チェックリストを提示します。
読み終えた時点で「まず何から始めるか」が分かるよう、次のアクションが明確になることを重視しています。
特定技能ビルクリーニング業とは? 制度の概要と対象範囲
オフィスビル、商業施設、病院、学校、官公庁、ホテルなどの現場で、日常清掃から定期清掃まで幅広く活用されています。
受入れ側(受入れ機関)には、業務の適正実施や支援体制、法令順守が求められます。単に「人手が足りないから雇う」ではなく、制度要件に沿った運用が必要です。
対象範囲を正しく理解することが、ミスマッチや不適切就労リスクを避け、採用効果を最大化する第一歩になります。
制度の目的と背景(特定技能制度・外国人労働者・人手不足)
特定技能制度は、国内人材の確保が難しい産業分野で、一定の専門性・技能を持つ外国人材の就労を認めるために整備されました。
ビルクリーニング分野は、施設の衛生維持という社会インフラ性が高い一方で、採用難が続きやすい構造があり、制度活用のニーズが大きい領域です。
大切なのは、特定技能が「単純労働を無制限に受け入れる制度」ではなく、試験などで技能を確認し、適正な雇用・支援のもとで就労してもらう枠組みだという点です。
企業側は、採用だけでなく、生活支援や相談対応なども含めた運用設計が求められます。
1号と2号の区分と業務内容(ビルクリーニング特定技能1号・2号)
特定技能には1号と2号があり、ビルクリーニング分野でも区分によって在留の考え方や期待する役割が変わります。
1号は、一定の技能と日本語能力を有し、現場で清掃業務を担う即戦力層を想定します。
2号は、より熟練した技能を前提に、長期就労やキャリア形成を見据えた枠組みで、現場の中核人材化を狙いやすくなります。
企業としては、まず1号で採用し、教育・評価・役割付与を通じて2号移行を支援することで、毎年の“採り直し”を減らす戦略が取りやすくなります。
| 区分 | 位置づけ(実務イメージ) | 企業側の狙い |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 現場で清掃作業を担う実務者層 | 欠員補充・現場稼働の安定化 |
| 特定技能2号 | 熟練者として長期就労・中核化を目指す層 | 定着・リーダー育成・採用回転の抑制 |
関係機関と協議会の役割(ビルクリーニング分野特定技能協議会など)
特定技能の運用では、出入国在留管理庁の在留審査だけでなく、分野ごとの所管省庁や協議会なども関わります。
ビルクリーニング分野では、分野特定技能協議会が情報共有や適正受入れの枠組みを担い、受入れ機関は必要に応じて加入・届出などの対応が求められます。
また、採用実務では登録支援機関、職業紹介事業者、教育機関、試験実施団体など複数の関係者が関わるため、役割分担が曖昧だと手戻りが起きやすくなります。
最初に「誰が何をやるか」を決め、社内の責任者と外部パートナーの連絡ルートを一本化しておくと、時間もコストも削減しやすくなります。
採用フローと要件:受入れから雇用・登録までの具体手続き
ここが曖昧だと、内定後に在留申請が通らない、支援計画が不備で差し戻される、現場配属が遅れるといった“余計なコスト”につながります。
逆に、フローをテンプレ化し、必要書類・スケジュール・担当者を固定すれば、2人目以降の採用はぐっと楽になります。
採用コスト削減のポイントは、初回で仕組みを作り、次から標準運用できる状態にすることです。
受入れ前の要件・基準(必要書類・人数・所属・登録)
受入れ前に確認すべきは、①会社が分野要件を満たすか、②雇用条件が適正か、③支援体制を用意できるかの3点です。
ビルクリーニング分野では、受入れ機関として「建築物清掃業(1号)」または「建築物環境衛生総合管理業(8号)」の登録が求められる点が重要です。
また、雇用契約は報酬・労働時間・業務内容を明確にし、日本人と同等以上の報酬水準などの原則を踏まえる必要があります。
必要書類は申請区分や採用ルートで変わるため、行政書士や登録支援機関と相談しながら「自社の標準セット」を作っておくと、手戻りを減らせます。
- 分野要件(建築物清掃業(1号)または建築物環境衛生総合管理業(8号)の登録確認)
- 雇用条件(業務内容・賃金・労働時間・配置先の明確化)
- 支援体制(自社支援か登録支援機関委託かの決定)
- 社内体制(責任者・現場教育担当・相談窓口の設定)
試験・評価の流れ(ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験・試験日程・合格)
特定技能1号で採用する場合、候補者は原則として分野の評価試験と日本語試験などの要件を満たす必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、現場で必要となる清掃の基礎知識・安全衛生・作業手順などを確認する位置づけで、合格者は一定の技能水準が担保されます。
企業側は、合格証明や受験状況を確認し、入社時期から逆算して試験日程・在留申請・渡航(海外在住の場合)を組み立てることが重要です。
採用のつまずきは「スケジュールの読み違い」で起きやすいので、最短でも2〜3か月、余裕を見て3〜6か月の計画をおすすめします。
2号への移行と登録手続き(在留資格・機関連絡)
2号への移行は、長期定着と中核人材化を進めるうえで大切な選択肢です。
現場で経験を積ませ、役割を段階的に引き上げ、必要な試験・要件を満たしたタイミングで在留資格変更の手続きを検討します。
移行時は、在留資格の手続きだけでなく、雇用契約の見直し(職務・賃金・手当)、教育記録や評価の整理、関係機関への連絡など、タスクが増えます。
場当たり的に進めると、本人のモチベーション低下や手続き遅延につながるため、「2号候補の育成ロードマップ」を作り、評価基準を事前に共有しておくと安心です。
日本語要件と評価(日本語能力試験・JLPT・実務での言語対応)
ビルクリーニングは作業手順を整えやすい一方で、現場では報連相、安全指示、薬剤・機材の注意事項、顧客対応など、日本語が必要な場面が多くあります。
そのため、試験要件としての日本語だけでなく、実務で必要な「現場日本語」をどう補うかが定着の鍵になります。
採用時は、JLPTなどのスコア確認に加え、面接で「指示を復唱できるか」「危険・禁止を理解できるか」「時間・場所・数量を正しく扱えるか」をチェックすると、ミスマッチを減らせます。
入社後は、清掃用語・現場ルール・クレーム一次対応の定型文をテキスト化し、短時間で反復できる仕組みを作ると教育コストを抑えられます。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 特定技能(ビルクリーニング分野)だと、どんな清掃業務まで任せられますか?
A. 基本は「住宅を除く建築物の内部清掃」が中心です。日常清掃・定期清掃など、分野の対象範囲に入る業務であれば担当できます。まずは自社の現場業務が対象範囲に合っているかを整理しておくと安心です。
Q2. 受入れ企業側は、どんな要件(登録など)が必要ですか?
A. 受入れ機関としての要件確認が必要です。業務内容が対象範囲に合っているか、雇用条件が適正か、支援体制をどうするかなども含めて、事前にチェックしておくと手戻りが減ります。
Q3. 採用までに、どれくらいの期間を見ておけばいいですか?
A. 条件や採用ルートによって変わりますが、手続きまで含めると数か月単位で考えるのが一般的です。試験日程と在留手続きから逆算してスケジュールを組むと、無理のない計画になります。
Q4. すでに日本にいる外国人(他の在留資格)を採用できますか?
A. 可能なケースがあります。現在の在留資格、試験の合否、在留資格変更の可否などで判断が変わるため、まずは本人の在留資格と就労状況を確認して進めるのがスムーズです。
Q5. 日本語はどの程度できれば現場で働けますか?
A. 大事なのは「現場で必要な日本語」が通じるかどうかです。危険・禁止、道具名、手順の復唱、報連相ができるかを面接で確認し、入社後は短いフレーズを反復する形で補強すると定着しやすくなります。
Q6. 登録支援機関は使った方がいいですか?それとも自社でできますか?
A. どちらも選べます。社内に支援を回せる体制があるなら自社運用も可能です。初めての導入や担当者の負担を抑えたい場合は、登録支援機関の活用が現実的です。
Q7. 採用コストは、どんな項目がかかりますか?
A. 初期費用(紹介・申請・渡航/住居準備・研修整備など)と、ランニング(支援委託費・面談/教育運用など)に分かれます。欠員損失や残業、クレーム対応など「見えにくいコスト」も含めて考えると、判断がブレにくくなります。
Q8. 住居(寮)や生活サポートは、企業側で必ず用意しないといけませんか?
A. 必ずしも「寮が必須」という形ではありません。ただ、生活の立ち上げが不安定だと早期離職につながりやすいので、住居・手続き・生活ルールの整備は、結果的に採用コスト削減にもつながります。
Q9. 配属先の現場が複数あります。現場の移動や応援配置はできますか?
A. 可能な範囲はありますが、雇用契約や業務範囲との整合が大切です。現場の追加・変更が起きやすい会社ほど、契約内容・説明資料・社内ルールを最初に整理しておくとトラブルを防げます。
Q10. 2号へ移行すると、何が変わりますか?会社側の準備は必要ですか?
A. 長期就労や中核人材化を見据えやすくなる一方、要件確認や手続き、役割・評価・処遇の設計が重要になります。「何ができれば次のステップに進めるか」を本人と共有しておくとスムーズです。
