特定技能(ビルクリーニング業)で外国人材を受け入れるための基本ガイド

オフィスビルや商業施設、病院、学校など、多くの人が利用する建物では、清潔で安全な環境づくりが欠かせません。
一方で、ビルクリーニング業界では高齢化や人材不足により、現場の担い手確保が大きな課題となっています。
その解決策のひとつが、在留資格「特定技能(ビルクリーニング)」を活用した外国人材の受け入れです。
本ページでは、特定技能(ビルクリーニング業)で外国人を受け入れる際に必要な条件やポイントを、ビルメンテナンス会社・清掃会社の方向けに分かりやすく整理しました。

管理人
ビルクリーニング業界は慢性的な人手不足に直面していますが、一方で需要は年々高まっています。これは、多くの人が利用する『特定建築物』の数が増加しているためです。特定建築物は環境衛生の維持管理が重要とされ、建築物衛生法に基づき清掃や点検などの基準が定められています。その中でも定期的な清掃は欠かせない業務であり、業界の需要拡大につながっています。

1. 特定技能(ビルクリーニング)とは?

在留資格「特定技能」は、人手不足が深刻な分野で、一定の技能と日本語能力を備えた即戦力外国人材を受け入れる制度です。
そのうちビルクリーニング分野は、次のような建築物内部の清掃業務を対象としています。

  • オフィスビル・商業施設
  • ホテル・宿泊施設
  • 病院・福祉施設
  • 学校・公共施設
  • 駅・空港・ターミナルなど、多くの人が出入りする建物内部

ポイントは、「多くの人に利用される建築物の内部清掃」が対象であり、
一般の住宅・戸建てのハウスクリーニングは原則として対象外とされている点です。

特定技能1号(ビルクリーニング)は、原則として通算5年まで在留可能で、
床・カーペット・ガラス・トイレなどの清掃を中心に、ビルクリーニング現場の中核を担う技能者クラスの人材を想定しています。


2. 外国人材側の主な条件(特定技能1号・ビルクリーニング)

特定技能(ビルクリーニング)として働く外国人には、「技能」と「日本語」の2つの水準が求められます。

2-1. 基本的な前提条件

  • 原則18歳以上であること(試験は17歳以上で受験可の場合あり)
  • 立ち仕事や夜間作業も含むビル清掃に支障のない健康状態であること
  • 日本のビルクリーニング分野で継続して働く意思があること

2-2. 技能水準:ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 or 技能実習2号

ビルクリーニング分野で特定技能1号の在留資格を得るには、以下のいずれかで技能水準を証明します。

  • ① ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格
    ・公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会が実施する試験です。
    ・試験は「判断試験」と「作業試験」の2つで構成され、合計60%以上で合格となります。
    ・判断試験:清掃方法・洗剤・用具の選択、安全衛生などに関する筆記試験
    ・作業試験:床清掃・ガラス清掃などを、決められた手順どおりに行えるかを評価
  • ② ビルクリーニング職種の技能実習2号を良好に修了
    ・ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の技能実習2号を「良好に修了」している場合、
    ・原則として、ビルクリーニング1号評価試験および日本語試験が免除されます。

2-3. 日本語能力:N4レベルが目安

ビルクリーニング分野の特定技能では、次のいずれかで日本語能力を証明します。

  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上
  • 国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2レベル以上

現場での作業指示、安全に関わる注意事項、清掃箇所の確認・報告などを日本語でやり取りできることが求められます。


3. 受け入れ側(ビルメンテナンス会社・清掃会社)の主な条件

特定技能外国人を雇用する事業者は、「特定技能所属機関」として一定の要件を満たす必要があります。

3-1. 事業者としての基本要件

  • ビルクリーニング業に関する都道府県知事の登録(建築物清掃業の登録)を受けた営業所であること
  • 労働基準法・最低賃金法・社会保険・労災保険など、各種法令を順守していること
  • 過去に入管法違反や重大な不正行為・不正受給などがないこと
  • ビルクリーニング分野の特定技能協議会に加入し、必要な報告・情報提供を行うこと

3-2. 雇用・労務管理の要件

  • 日本人と同等以上の報酬水準
    同じ現場・同じ作業内容で働く日本人と比べ、著しく低い賃金設定は認められません。
  • 直接雇用・フルタイムが原則
    ・特定技能外国人は派遣や請負ではなく、事業者による直接雇用でなければなりません。
    ・週30時間以上のフルタイム就労を基本とし、安定した雇用関係を結ぶことが求められます。
  • 社会保険・雇用保険への加入
    要件を満たす場合、健康保険・厚生年金・雇用保険などに加入させる必要があります。
  • 適正な労務管理
    夜間勤務・早朝勤務・休日勤務が多くなりがちな業界だからこそ、
    労働時間・残業・深夜割増などを適正に管理する体制が求められます。

4. 特定技能「ビルクリーニング」で従事できる業務

特定技能(ビルクリーニング)で従事できる業務は、多くの人が利用する建築物内部の清掃に限定されています。

4-1. 主な業務の範囲

  • 床の清掃
    ドライメンテナンス(ほうき・モップ・ダスター)、ウェットメンテナンス(洗浄・ワックス掛け)、ポリッシャー等の機械洗浄
  • カーペットの清掃
    バキューム(掃除機掛け)、シミ取り、カーペット洗浄機を用いた洗浄など
  • ガラス・サッシの清掃
    スクイジーやガラスクリーナーを用いた窓ガラス清掃、サッシの拭き上げ
  • トイレ・洗面所などの衛生設備の清掃
    便器・手洗い場・鏡・床などの洗浄・除菌・消臭
  • エレベーターホール・階段・共用部の清掃
    ホコリ取り・拭き掃除・ゴミ回収など

4-2. 関連業務として認められる範囲

  • 清掃用具・洗剤の準備・補充・片付け
  • 作業日報・チェックリストへの簡単な記録
  • 作業エリアの鍵の受け渡し・施錠確認など

一方で、戸建て住宅・一般家庭の清掃業務は対象外とされます。
また、現場管理・計画作成・複数作業員の指導といった業務は、主に特定技能2号や日本人スタッフの役割とされています。


5. 受け入れ準備で押さえたい実務ポイント

5-1. 現場配置と担当エリアの明確化

  • 担当フロアや担当エリア(トイレ・共用部・オフィスなど)を明確にしておく
  • 1日の作業スケジュール(開始~巡回~点検~終了)をタイムラインで共有
  • 定期作業(ワックス掛け・ガラス高所清掃)と日常清掃の違いを説明

5-2. 安全・衛生面の教育

  • 転倒・感電・薬剤の取扱いなど、ビル清掃ならではの危険ポイントを図や写真で説明
  • 洗剤の希釈・保管方法、混ぜてはいけない薬剤(酸性・塩素系など)の注意喚起
  • 脚立・足場・階段などでの作業ルール、安全帯の使用方法

5-3. 日本語・コミュニケーションの工夫

  • 「よく使う用語集」(モップ・バケツ・ポリッシャー・コンセント・ブレーカー 等)を日本語+母語で作る
  • 注意事項や禁止事項は、ピクトグラムやイラスト入りで掲示
  • 簡単な報告フレーズ(「終わりました」「ここに汚れがあります」など)を共有

6. 登録支援機関と支援体制

特定技能1号では、外国人に対して生活支援・日本語支援などの「支援計画」を実施することが義務付けられています。
この支援を、

  • ビルメンテナンス会社が自ら行う「自社支援」
  • 登録支援機関に委託する「委託支援」

のいずれか、または組み合わせで行います。

6-1. 法定支援の主な内容

  • 事前ガイダンス(労働条件・仕事内容・生活ルール等の説明)
  • 入国時の出迎え・住居への案内
  • 生活オリエンテーション(ごみ出し・交通・病院・コンビニの利用など)
  • 行政手続き(住民登録・銀行口座・携帯電話契約など)の補助
  • 日本語学習機会の提供
  • 相談・苦情対応(できれば母国語対応)
  • やむを得ない事情が生じた場合の転職支援 など

清掃現場は夜間や早朝の勤務も多いため、勤務時間外の生活サポートは登録支援機関と連携して行うケースが一般的です。


7. 特定技能2号(ビルクリーニング)というキャリアステップ

ビルクリーニング分野は、1号だけでなく特定技能2号の対象にもなっています。
2号は、より高い技能を持ち、現場の中核として指導・管理も担える人材を想定した在留資格です。

7-1. 特定技能2号(ビルクリーニング)の主な特徴

  • 在留期間の更新に上限がなく、長期就労が可能
  • 条件を満たせば家族帯同(配偶者・子)も認められる
  • 1号と比べて、より高度な技能・実務経験・指導力が求められる

7-2. 2号になるためのイメージ

  • ビルクリーニング現場で一定年数の実務経験を積んでいること
  • ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験、またはビルクリーニング技能検定1級等に合格していること
  • 複数の作業員を指導し、作業計画や進行管理、安全管理も行えるレベルであること

特定技能1号の段階から、将来は2号・現場リーダーとして活躍してもらう前提で育成することで、
現場の安定運営や人材定着にもつながります。


8. 特定技能(ビルクリーニング業)受け入れのまとめ

  • 特定技能(ビルクリーニング)は、多くの人が利用する建築物内部の清掃業務に従事する即戦力外国人材を受け入れる制度
  • 外国人材には、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 or ビルクリーニング技能実習2号修了」と「日本語(N4程度)」が主な条件として求められる
  • 受け入れ企業には、都道府県知事登録を受けたビルクリーニング業者であること、日本人と同等以上の処遇、フルタイム・直接雇用、法令順守、支援体制の構築などが必要
  • 清掃以外の単純作業に専ら従事させることや、戸建て住宅のハウスクリーニングを主業務にすることはNG
  • 特定技能2号を活用すれば、熟練した外国人清掃スタッフを長期的に雇用し、班長・現場リーダーとして育成することも可能

特定技能(ビルクリーニング)を上手に活用することで、慢性的な人手不足の解消だけでなく、清掃品質の向上や現場の安定運営にもつながります。
自社の現場体制や建物の特性に合わせて、受け入れ方法や教育プランを設計し、「一緒に現場を支えるパートナー」として外国人材を迎え入れていきましょう。

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