本文は、特定技能における「介護職」について、できるだけ分かりやすく解読したものとなります。
特定技能の介護分野で外国人材の受け入れが可能になりました。現在日本で介護職の外国人を受け入れできる在留資格は4種類となります。
・EPA(フィリピン、インドネシア、ベトナムの3ヵ国)
・介護ビザ
・留学ビザ
・技能実習ビザ
・特定技能ビザ
※EPAと介護ビザの違いは、EPAは介護福祉士候補者であり、介護ビザは介護福祉士取得者であります。
※EPA介護福祉士の候補者は一定の条件を満たせば特定技能1号へ移行が可能となりました、また看護師の候補者も特定技能1号への移行が可能となる見込みです。(後半の文章で詳細に説明をしています)
特定技能で認められた特定産業「介護分野」とは
日本人の雇用を確保することが極めて厳しい状況であるため、外国人により人材不足を確保するための分野のこと。
特定技能の介護人材を採用して慢性化している人材不足からの脱却
現在2021年では、昨年度の新型コロナウィルスの影響から医療・介護人材の需要が高まっています。
また、予てから2025年には55万人の介護人材不足の問題が顕著になると予想されています。この未曾有の問題に直面する日本の介護業界で特定技能外国人を受け入れて介護分野の存続・発展を図り日本経済・社会基盤を持続可能なものにしていくことが推奨されています。
積極的に介護業界の働き方改革を取り入れて、国内人材確保に取り組んでいるのが伺えますね。
向こう5年で30万人の受入れを想定
都道府県別の介護分野においては、有効求人倍率がおそよ2倍以上の状況にあって、2020年度末までには約26万人、2025年度末までには約55万人を追加で確保する必要性があります。
向こう5年間では、30万人程度の介護人材の不足が見込まれています。
求められる人材の基準
介護の特定技能1号の在留資格を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
「介護日本語評価試験」に合格すること(又は同等以上の水準)が義務付けられています。
※2017年11月から技能実習制度において、介護分野が受入れ対象となったため、現在ではまだ技能実習2号を修了した者が存在しないため、特定技能への移行はないものとなります。※2021年8月2日現在では、技能実習を修了した実習生からの特定技能移行が可能となります。
特定技能1号の介護業務
・支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
技能実習での介護受入れが遅れた(条件が厳しかったため)、「試験のハードルを下げて多くの方に従事してもらう」「ハードルは上げて介護の質を保守していくべき」など、意見が様々。
受け入れ可能な事業所
施設・事業 |
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児童福祉法関係の施設・事業 |
指定発達支援医療機関 |
児童発達支援 |
放課後等デイサービス |
障害児入所施設 |
児童発達支援センター |
保育所等訪問支援 |
障害者総合支援法関係の施設・事業 |
短期入所 |
障害者支援施設(施設入所支援) |
療養介護 |
生活介護 |
共同生活援助(グループホーム) |
自立訓練 |
就労移行支援 |
就労継続支援 |
福祉ホーム |
日中一時支援 |
地域活動支援センター |
老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 |
第1号通所事業 |
通所介護(療養通所介護、老人デイサービスセンターを含む) |
地域密着型通所介護 |
認知症対応型通所介護 |
介護予防認知症対応型通所介護 |
老人短期入所施設 |
短期入所生活介護 |
介護予防短期入所生活介護 |
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設(地域密着型介護老人福祉施設も含む)) |
小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護 |
複合型サービス |
認知症対応型共同生活介護 |
介護予防認知症対応型共同生活介護 |
介護老人保健施設 |
介護医療院 |
通所リハビリテーション |
介護予防通所リハビリテーション |
短期入所療養介護 |
介護予防短期入所療養介護 |
特定施設入居者生活介護 |
介護予防特定施設入居者生活介護 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 |
生活保護法関係の施設 |
救護施設 |
厚生施設 |
地域福祉センター |
隣保館デイサービス事業 |
独立行政法人国立重度知的障害者のぞみの園 |
ハンセン病療養所 |
原子爆弾被爆者療護ホーム |
原子爆弾被爆者デイサービス事業 |
原子爆弾被爆者ショートステイ事業 |
労災特別介護施設 |
病院又は診療所 |
病院 |
診療所 |
上記の施設で特定技能介護士を受入れ可能となります。
主に介護施設での受入れが多いとされている施設は以下となります。
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・特定介護福祉施設
・グループホーム
・通所介護事業所(デイサービス)
※病院では、看護助手として特定技能介護士が働くことが可能となっています。
また、訪問系サービスは除外しています。
そして、事業所ごとに受け入れ出来る人数は、「日本人の常勤介護職員の総数まで」と上限を設けています。
例えば、介護施設に常勤介護職員が10名在籍しているのであれば、特定技能の介護人材は10名受入れが可能となります。
また、技能実習では、常勤介護職員総数の1割が受入れ可能となります。
介護技能評価試験の日程
最新のスケジュール日程は、以下のリンクから確認が出来ます。
特定技能の14業種において、各分野では特定技能評価試験が実施されます。 管理人 1号特定技能外国人が介護業で働くためには、「介護業技能・日本語評価試験(特定技能評価試験)」に合格する必要があります。 【更新中】介護業:[…]
技能試験、日本語試験の問題内容とは!?サンプル問題集は!?
技能試験は現地語で全45問から出題され、試験時間は60分です。出題される問題内容は、写真などを表示して正しい介護手順かどうか!?を答える問題などが設定されています。
日本語試験は全15問から出題され、試験時間は30分です。出題される問題内容は、「更衣室」や「車いす」などの介護用語や、介護する場面に応じた正しい声掛けなどが問われます。
介護職の特定技能外国人の雇用形態
直接雇用のみ。
※派遣雇用は認められていません。
特定技能協議会への加入
受入れ企業(特定技能所属機関)は、初めて介護分野において「1号特定技能外国人」を受け入れた際は、1号特定技能外国人が入国後4ヶ月以内に厚生労働大臣が設置する特定技能外国人の受入れに関する協議会に加入する必要があります。
そして、加入後は協議会に必要な協力を行うことが義務付けられています。
また、登録支援機関も業種によって協議会に加入を求められる業種がありますが、特定技能の介護で登録支援機関を行う場合は、協議会への加入義務はないものとなっております。
特定技能の介護と技能実習制度の介護との違い
人員配置基準について
・技能実習制度では、2か月間の入国研修+6か月間の現場実習が必要なため、8ヵ月間で人員配置基準に満たす条件となります。
・特定技能では、初日から日本人職員と同等の扱いであり、人員配置基準が可能となります。
従事する業務
・技能実習制度では、実習することが目的なので、業務内容が違うと同じ施設内であっても配置換えができません。
・特定技能では、就労する事が定義されているので、簡単に配置換えが可能です。
外国人介護人材の配置基準上の取扱いについて
特定技能1号の外国人材の介護報酬上の取扱いに関する基本的な考え方として、以下の取り組みを実施します。
特定技能1号の外国人については、技能実習3年修了の人材と介護技能が同等であることから、就労と同時に配置基準に算定する。ただし、一定期間、他の日本人職員とチームでケアに当たる等、受け入れ施設における順応をサポートし、ケアの安全性を確保するための体制をとることを求めることとする。
特定技能の介護職では、初日からでも夜勤ができる仕組み
特定技能ビザの保持者について、厚労省は介護分野の独自ルールを記載しています。
「介護分野における「特定技能ビザ」の保持者は、人員配置基準に就労と同時に算定することを可能とする」として、「入国前に受ける介護技能・日本語評価試験に合格しているのであれば必要なスキルを既に持っていると見なし、初日から、日本人職員と同等の扱いで構わないと記載しています。
厚生労働省の上記資料でも記載している通り、「勤務初日から人員配置算定しても構わないが、一定期間(半年を目処)は他の日本人職員とチームでケアに当たり、サポートを行うこと」が条件となります。
技能実習「介護」・EPA・在留資格介護の介護報酬上の考え方について
注1)EPA、技能実習のいずれについても、日本語能力試験N2を取得している者は、就労開始から算定される。
注2)訪日前研修については、インドネシア人、フィリピン人候補生については6ヶ月、ベトナム人候補生については12ヶ月の研修期間が設けられている。なお、技能実習については、訪日前講習の義務はない。
注3)在留資格「介護」については、在留資格「留学」で訪日した上で養成校を卒業し、介護福祉士の資格を取得(※一部特例あり)すると在留資格「介護」となる。なお、在留資格「留学」では、資格外活動の労働について週28時間の上限があることに留意。
EPA介護福祉士候補者は特定技能1号へ移行が可能!
EPA介護福祉士受験者で一定の条件を満たした人が希望すれば、日本語試験などを経ずに「特定技能1号」に移行が出来るようになりました。
介護福祉士候補者が特定技能1号に移行できる条件は、以下となります。
・4年以上の就労経験
・国家試験での合格点が5割以上(試験免除)
厚生労働省から公表された資料は、こちら
必要な手続き等々の詳細は、こちら
特定技能の介護士になった外国人材の方々は、次のステージ「介護福祉士」への道が開かれています。
特定技能の介護士が快適に働いて活躍してもらうには!?
日本人特有の「空気を読む」「意図を察する」ことは、外国人の文化には基本的にありません。言葉にして話し合いお互いに意思疎通を図ること、そして、お互いの意見を明確に主張して妥協点を探ろうとする傾向が強い国の方が多いです。
そこで、日本の介護現場で働く外国人の方々が自律的に学習できるサイトを紹介します。
日本語能力試験のN3程度合格や特定技能評価試験対策などを目的とした学習支援ツールです。こちらのコンテンツは、日本語学習や日本の介護に関心のある方であれば誰でも無料で利用できます。
「にほんごをまなぼう」日本語自律学習支援ツール(WEBコンテンツ)
受入れ施設での定着支援
特定技能外国人介護士を受け入れる目的を事業所内で共有
既に受入れ施設で働く日本人介護職員にも、特定技能外国人介護士を受入れる趣旨を説明する研修やオリエンテーションを行うこと。
日本の文化・生活習慣や仕事の基本ルールを伝えること
日本式のあいさつや時間の使い方や、ホウレンソウとして「報告・連絡・相談」の重要性など、日本で快適に働くためのビジネスマナーや職場の基本的なルールを教えること。
従事する介護業務の統一化・標準化や言葉使いの見直し(ゆっくりはっきり)をすること
日本人介護職員によっては、人それぞれの業務の教え方や進め方がある場合があるので、教えられる側の外国人は何を基準にして信じて働けばいいのか分からず混乱してしまいます。あらかじめ受入れ施設の介護業務を統一し標準化しておくこと。
国ごとにそれぞれ国民性があるので、日本で就労する外国人の出身国の文化や生活習慣(食事や礼拝など)を理解すること。そして、お互いに尊重し合い受け入れること。また、自分が逆の立場ならどうするか?を常に念頭に置いて外国人の支援をしていくこと。
特定技能の介護職について 【まとめ】
特定技能の介護は業種12分野の中でも受け入れる人数が多い分野です。
【2023年6月末でのデータから見る傾向】
・日本で働いている特定技能の介護人材の総数2703名います。
・受入れエリアでみると、東京、大阪など都市部が中心ですが、地方での受入れも増えてきています。
・国籍別で見ると、ベトナム、インドネシア、フィリピンとEPA介護福祉士・候補者の受入れ国が先行しています。
・性別で見ると、3:7の割合で女性が多いです。また、年齢は18~29歳の若い人材が大半を占めています。
・特定技能介護ビザの取得経路では、技能実習からの移行組みが約半数占めています。
しかし、人材の質が問われる事になり、今後介護施設、医療法人が見定める日本語レベルN3、現場研修(on the job training)などを習得した特定技能の介護人材が重宝される事になるのではないかと思います。