どの業界も人手不足ですが、極めて深刻な介護分野について説明します。このページでは、将来的に外国人受入れ制度として活用される「特定技能」の概要を解読いたします。
特定技能の介護とは!?
特定技能「介護」とは、外国人労働者が日本で介護分野に従事するために必要なビザ制度の一つです。
この制度は、深刻な人手不足に直面している日本の介護業界を支援するために導入されました。
外国人が日本で介護士として就労するには、EPA(経済連携協定)、在留資格「介護ビザ」、技能実習ビザ、特定技能ビザの4つのビザ制度がありますが、この記事では、特定技能「介護」について解説します。
対応可能な業務と就業可能な施設形態
特定技能「介護」を取得した外国人が担当できる業務は以下の2つです。
支援
訓練や介助関連の補助全般、レクリエーション企画などが該当します。
身体介護
対象者に直接触れる業務、排せつや入浴介助などが該当します。
ただし、訪問系のサービスは対応できないので注意が必要です。
受け入れ可能な事業所
施設・事業 |
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児童福祉法関係の施設・事業 |
指定発達支援医療機関 |
児童発達支援 |
放課後等デイサービス |
障害児入所施設 |
児童発達支援センター |
保育所等訪問支援 |
障害者総合支援法関係の施設・事業 |
短期入所 |
障害者支援施設(施設入所支援) |
療養介護 |
生活介護 |
共同生活援助(グループホーム) |
自立訓練 |
就労移行支援 |
就労継続支援 |
福祉ホーム |
日中一時支援 |
地域活動支援センター |
老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 |
第1号通所事業 |
通所介護(療養通所介護、老人デイサービスセンターを含む) |
地域密着型通所介護 |
認知症対応型通所介護 |
介護予防認知症対応型通所介護 |
老人短期入所施設 |
短期入所生活介護 |
介護予防短期入所生活介護 |
特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設(地域密着型介護老人福祉施設も含む)) |
小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護 |
複合型サービス |
認知症対応型共同生活介護 |
介護予防認知症対応型共同生活介護 |
介護老人保健施設 |
介護医療院 |
通所リハビリテーション |
介護予防通所リハビリテーション |
短期入所療養介護 |
介護予防短期入所療養介護 |
特定施設入居者生活介護 |
介護予防特定施設入居者生活介護 |
地域密着型特定施設入居者生活介護 |
生活保護法関係の施設 |
救護施設 |
厚生施設 |
地域福祉センター |
隣保館デイサービス事業 |
独立行政法人国立重度知的障害者のぞみの園 |
ハンセン病療養所 |
原子爆弾被爆者療護ホーム |
原子爆弾被爆者デイサービス事業 |
原子爆弾被爆者ショートステイ事業 |
労災特別介護施設 |
病院又は診療所 |
病院 |
診療所 |
上記の施設で特定技能介護士を受入れ可能となります。
主に介護施設での受入れが多いとされている施設は以下となります。
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・特定介護福祉施設
・グループホーム
・通所介護事業所(デイサービス)
※病院では、看護助手として特定技能介護士が働くことが可能となっています。
また、訪問介護サービスは業務として出来ません。
求められる人材の基準
介護の特定技能1号の在留資格を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
「介護日本語評価試験」に合格すること(又は同等以上の水準)が義務付けられています。
そして、事業所ごとに受け入れ出来る人数は、「日本人の常勤介護職員の総数まで」と上限を設けています。
例えば、介護施設に常勤介護職員が10名在籍しているのであれば、特定技能の介護人材は10名受入れが可能となります。
また、技能実習では、常勤介護職員総数の1割が受入れ可能となります。
雇用形態
直接雇用のみ。
※派遣雇用は認められていません。
特定技能協議会への加入が必要
受入れ企業(特定技能所属機関)は、初めて介護分野において「1号特定技能外国人」を受け入れた際は、1号特定技能外国人が入国後4ヶ月以内に厚生労働大臣が設置する特定技能外国人の受入れに関する協議会に加入する必要があります。
そして、加入後は協議会に必要な協力を行うことが義務付けられています。
また、登録支援機関も業種によって協議会に加入を求められる業種がありますが、特定技能の介護で登録支援機関を行う場合は、協議会への加入義務はないものとなっております。
特定技能の介護士が快適に働いて活躍してもらうには!?
日本人特有の「空気を読む」「意図を察する」ことは、外国人の文化には基本的にありません。言葉にして話し合いお互いに意思疎通を図ること、そして、お互いの意見を明確に主張して妥協点を探ろうとする傾向が強い国の方が多いです。
そこで、日本の介護現場で働く外国人の方々が自律的に学習できるサイトを紹介します。
日本語能力試験のN3程度合格や特定技能評価試験対策などを目的とした学習支援ツールです。こちらのコンテンツは、日本語学習や日本の介護に関心のある方であれば誰でも無料で利用できます。
「にほんごをまなぼう」日本語自律学習支援ツール(WEBコンテンツ)
受入れ施設での定着支援
特定技能外国人介護士を受け入れる目的を事業所内で共有
既に受入れ施設で働く日本人介護職員にも、特定技能外国人介護士を受入れる趣旨を説明する研修やオリエンテーションを行うこと。
日本の文化・生活習慣や仕事の基本ルールを伝えること
日本式のあいさつや時間の使い方や、ホウレンソウとして「報告・連絡・相談」の重要性など、日本で快適に働くためのビジネスマナーや職場の基本的なルールを教えること。
従事する介護業務の統一化・標準化や言葉使いの見直し(ゆっくりはっきり)をすること
日本人介護職員によっては、人それぞれの業務の教え方や進め方がある場合があるので、教えられる側の外国人は何を基準にして信じて働けばいいのか分からず混乱してしまいます。あらかじめ受入れ施設の介護業務を統一し標準化しておくこと。
国ごとにそれぞれ国民性があるので、日本で就労する外国人の出身国の文化や生活習慣(食事や礼拝など)を理解すること。そして、お互いに尊重し合い受け入れること。また、自分が逆の立場ならどうするか?を常に念頭に置いて外国人の支援をしていくこと。
特定技能の介護職について 【まとめ】
特定技能の介護は業種12分野の中でも受け入れる人数が多い分野です。
【2024年6月末でのデータから見る傾向】
・日本で働いている特定技能の介護人材の総数36,719名います。
・受入れエリアでみると、東京、大阪など都市部が中心ですが、地方での受入れも増えてきています。
・国籍別で見ると、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、フィリピン
・性別で見ると、3:7の割合で女性が多いです。また、年齢は18~29歳の若い人材が大半を占めています。
・特定技能介護ビザの取得経路では、技能実習からの移行組みが約半数以上を占めています。