少子高齢化が進む中、介護現場では外国人介護人材の受け入れが重要なテーマになっています。
本ページでは、在留資格「特定技能1号(介護)」で外国人を受け入れる際に必要な条件やポイントを、事業所の担当者・経営者の方向けに分かりやすくまとめました。
「何が必要で、どこに気をつければいいか」をざっくり全体像から詳しく説明して整理していきますね。

1. 特定技能(介護)とは?
特定技能1号(介護)は、一定の介護技能と日本語能力を持つ外国人が、介護現場で即戦力として働くための在留資格です。
在留期間は通算最長5年で、介護業務に従事することが前提となります。
- 人材側:介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語試験などの合格
- 受け入れ側:適正な介護事業所としての運営・労働法令の順守
まずは、人材側の条件と事業所側の条件をしっかり整理することが重要です。
2. 外国人本人(人材側)の主な条件
2-1. 在留資格「特定技能1号(介護)」の取得
- 出入国在留管理庁への在留資格認定証明書交付申請、または在留資格変更許可申請が必要
- 受け入れ先の介護施設との雇用契約が前提条件
2-2. 技能水準と日本語能力
- 介護技能評価試験に合格していること
身体介護・生活援助・介護過程などに関する基礎的な知識・技能を問う試験です。 - 介護日本語評価試験の合格
介護現場で必要となる日本語表現(用語・会話)を理解できることが求められます。 - 一般日本語試験
日本語能力試験(JLPT)N4以上、またはJFT-BASICなど同等レベルの試験に合格していることが条件とされています。
2-3. 健康状態・素行など
- 就労に支障のない健康状態であること(健康診断書等で確認するのが一般的)
- 過去の在留状況や法令違反歴に重大な問題がないこと

3. 受け入れる施設・法人側の主な条件
3-1. 介護事業所としての基本要件
- 介護保険法など関係法令に基づき適正に運営されている事業所であること
- 対象となる事業所の例:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、通所系事業所など
- 労働基準法、最低賃金法、社会保険・雇用保険など、各種法令を順守していること
- 過去に入管法違反や重大な不正・不正受給などがないこと
3-2. 雇用条件に関するポイント
- フルタイム(常勤)雇用が原則
週30時間以上など、常勤としての勤務形態が求められます。 - 日本人と同等以上の報酬水準
同じ業務に従事する日本人職員と比べて、著しく低い賃金設定はNGです。 - 社会保険・雇用保険への加入
通常の常勤職員と同様に、各種保険への加入が必要です。 - 残業代・割増賃金の適正な支払い
夜勤・早出・遅出などシフト制勤務の場合も、労基法に沿った勤怠管理が求められます。
4. 受け入れ準備で押さえるべき実務ポイント
4-1. 業務内容の整理と明文化
- 介護業務が中心であること
特定技能(介護)で認められているのは「介護業務」です。
身体介護・生活援助・レクリエーション・記録などが該当します。 - 補助業務だけをさせるのはNG
清掃のみ、調理のみ、送迎のみなど「介護業務を伴わない仕事」だけを行わせることは適切ではありません。 - 職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成
担当業務・シフト・責任範囲を文書化しておくことで、本人・同僚・家族への説明もしやすくなります。
4-2. 指導・教育体制
- メンター(指導担当者)の配置
できるだけ同じシフト帯に入り、日常的にフォローできる先輩職員を決めておきます。 - 受け入れ初期の研修
- 日本の介護保険制度や介護の基本的な考え方
- 事業所内ルール、申し送りの方法、記録の書き方
- 感染対策、事故・ヒヤリハット報告の流れ
- わかりやすいマニュアルの準備
写真やイラスト、簡単な日本語でまとめた手順書があると定着がスムーズです。
4-3. 日本語・コミュニケーション支援
- 専門用語にはふりがなを付ける・図やイラストを活用する
- 申し送りや記録様式を、なるべく平易な日本語表現に整える
- 月1回程度の日本語勉強会・介護用語勉強会などを設ける
特定技能として受け入れた外国人が、将来的に介護福祉士を目指す場合にも、日本語学習への継続的な支援が大きなカギとなります。
4-4. 生活面のサポート
- 社宅・寮の提供、または近隣賃貸物件の契約サポート
- 住民登録・マイナンバー・保険・年金など、役所手続きのサポート
- ゴミ出しや騒音など、日本での生活マナーのオリエンテーション
- 地域イベントや職場内交流会の開催など、孤立を防ぐ工夫

5. 登録支援機関との役割分担
特定技能1号では、外国人への生活支援・日本語支援等を行うことが義務付けられています。
そのため、「自社で支援体制を整える」か「登録支援機関に委託する」かを選択する必要があります。
5-1. 法定支援の主な内容
- 事前ガイダンス(母国・日本での説明)
- 入国時の空港出迎え
- 住居の確保・生活に必要な契約サポート
- 生活オリエンテーション(生活ルール・病院のかかり方など)
- 公的手続き(役所・銀行・携帯電話契約など)の同行・補助
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情対応(可能であれば母国語対応)
- やむを得ない事情が生じた際の転職支援 など
自社だけで全ての支援を行うのが難しい場合は、介護分野の支援実績が豊富な登録支援機関を選ぶことがポイントです。
6. 特定技能(介護)受け入れのまとめ

- 人材側は、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語試験に合格していることが前提
- 事業所側は、介護事業所としての適正な運営と、労働法令の順守が必須
- 業務内容の明文化・指導体制・日本語・生活支援など、現場での受け入れ準備が重要
- 登録支援機関との役割分担を明確にし、無理のない体制を構築することが成功のカギ
外国人介護人材を「ただの人手」ではなく、チームの一員・将来の戦力として捉えることで、現場の雰囲気やサービスの質の向上にもつながります。
自施設の状況に合わせて、受け入れ条件や社内説明資料を整備していきましょう。
