本記事は、特定技能「自動車整備」で外国人材の採用を検討している整備工場・ディーラー・整備事業者の人事/現場責任者、または受け入れ手続きを担当する総務担当者に向けた実務ガイドです。
制度の概要から、業務範囲の考え方、試験、受け入れ準備、在留資格(ビザ)申請、受け入れ後の運用までを、迷いやすいところを中心に整理します。
「何から始めればよいか」「認証工場の要件は?」「協議会加入はいつ必要?」「申請で落ちる原因は?」といった実務のつまずきポイントを、手順と注意点に分けてわかりやすくまとめます。
1. 特定技能制度×自動車整備業の概要:人材不足の背景と活用メリット
特定技能「自動車整備」は、一定の技能と日本語力を持つ外国人が、日本の整備現場で働けるようにした在留資格です。
採用側のメリットは、技能実習よりも「即戦力寄り」で、整備作業に直結する業務設計がしやすい点です。
ただし、受け入れ企業には支援体制・協議会対応・体制整備などの要件があり、準備不足だと差し戻しや不許可につながります。
先に制度要件を整理し、採用計画(人数・配置・教育)まで落とし込むことで、手戻りを減らせます。
特定技能1号・2号の違い(ざっくり理解)
特定技能は「1号(一定の技能+日本語)」と「2号(熟練技能)」に分かれます。
自動車整備分野は1号中心で運用され、2号は条件を満たすことで長期就労・キャリア形成につながります。
企業側は、雇用契約の適正化、支援計画、分野ルール(所管省庁)の遵守が求められます。
| 区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験(試験等で確認) | 熟練した技能(評価試験等で確認) |
| 在留期間 | 通算上限あり(更新制) | 更新により長期就労が可能 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可 |
| 支援 | 支援計画に基づく支援が必要 | 分野・運用により取扱い確認が必要 |
2. 自動車整備の業務内容:従事できる範囲・基準(ここがズレると危険)
特定技能「自動車整備」でつまずきやすいのが「実際にやらせる仕事」と「申請書類に書く職務内容」のズレです。
点検・整備・部品交換など中心業務はもちろん、洗車・清掃・回送など付随業務も発生しますが、付随業務が主になると不一致リスクが上がります。
先に「整備が主・付随は従」を社内で決め、職務記述書(ジョブディスクリプション)で見える化するのがおすすめです。
「できる/できない」を判断する3つの軸
判断は、(1)分野の対象業務(整備)に該当するか、(2)事業場の設備・体制で実施できるか、(3)安全と品質を担保する指導監督があるか、で整理します。
迷う場合は、整備作業の比率・内容・指導体制を職務記述書で明確化してから申請に臨むのがポイントです。
- 整備が主:点検、故障診断、部品交換、分解整備、検査・記録
- 付随業務は従:洗車、清掃、回送、部品管理、作業準備
- 不一致リスク:営業専任、事務専任、整備と無関係な倉庫作業が中心
整備士資格との違い(誤解しやすい点)
特定技能は「在留資格」であり、国家資格である自動車整備士とは別物です。
そのため、現場では有資格者が品質・安全を担保する指導体制を組み、段階的に作業範囲を広げる運用が現実的です。
雇用主としての責任(労務管理・安全配慮・教育)は受け入れ企業に残る点が重要です。
3. 特定技能1号の要件・条件:チェックリスト(企業側・本人側)
1号で受け入れるには、企業側の要件(雇用条件・支援・届出など)と、本人側の要件(技能・日本語など)の両方が必要です。
特に技能実習からの移行は「免除の思い込み」で詰まりやすいので、修了区分や職種・作業の一致を丁寧に確認しましょう。
企業側:雇用契約・処遇・支援体制
直接雇用が原則で、賃金や労働条件は日本人と同等以上が基本です。
支援計画(自社または登録支援機関委託)と、運用後の届出・面談記録なども含めて、受け入れ前に体制を固めます。
「採用できたら終わり」ではなく、運用まで含めた体制整備が重要です。
本人側:日本語(JLPT/JFT)・技能(評価試験)・書類
日本語はN4相当(またはJFT-Basicなど)を基本に、技能は分野の評価試験等で確認されます。
実務で多いのは、氏名表記ゆれ、日付の矛盾、職歴の説明不足です。
「要件を満たしている」ことを書類で説明できる状態にするのがポイントです。
4. 試験対策:学科・実技の学び方(教材の探し方も)
対策は「整備の流れ(点検→診断→作業→確認→記録)」を理解し、用語を日本語で説明できる状態を目指すのが近道です。
教材は非公式のまとめPDFに頼りすぎず、国土交通省や試験実施団体の案内を起点に確認するのが重要です。
5. 受け入れ準備:登録支援機関・協議会・地方運輸局までの流れ
受け入れ準備は、採用活動より前に「体制要件を満たすか」を確認するところから始めると安全です。
「採用→申請」ではなく、「要件確認→体制整備→採用→申請」の順で進めるのがポイントです。
登録支援機関を選ぶときの見方
支援内容(住居、面談、相談、行政手続き補助など)と費用だけでなく、支援記録(evidence)をどう残すかが大切です。
「安いが記録が弱い」は更新時や調査時に困るので、記録設計が重要です。
6. 申請(ビザ)実務:必要書類・電子申請・よくある不備
申請で見られるのは「書類が揃っているか」だけではなく、「説明がつながっているか」です。
業務内容・雇用条件・支援計画・協議会・試験合格・会社実態が矛盾なくつながるように、提出前に突合しましょう。
不備を減らすチェック(最低限)
- 職務内容:整備が主、付随が従(実態と一致)
- 雇用条件:同等以上・直接雇用・勤務地の説明が可能
- 支援計画:実行可能(誰が・いつ・何をやるか)
- 添付:不足なし(契約・支援・試験・協議会・会社資料)
- 表記:氏名・日付・住所などの矛盾がない
7. 受け入れ後の義務と支援:定着・トラブル防止の運用設計
支援の未実施や記録不足は、行政指導や更新時のリスクになり得ます。
整備現場では安全・品質が最優先なので、言語の壁があるほど「指示の出し方」「ダブルチェック」「ヒヤリハット共有」の仕組みが効いてきます。
「生活支援」だけでなく「現場で成長できる設計」まで含めるのがポイントです。
8. 費用の全体像:試験・採用・支援・申請にかかるコスト
費用は、採用チャネル(紹介・求人)や渡航・住居、支援委託費、申請対応、更新対応などで構成されます。
見積もりは、初期費用と月額だけでなく、追加費用条件・解約条件まで含めて比較すると安全です。
9. 特定技能2号の要件と今後:自動車整備分野でのキャリア設計
2号は要件が重くなるため、1号の段階から「どの作業に・どれだけ従事したか」を説明できるよう、OJT記録や作業記録のテンプレ化をおすすめします。
評価制度(できる作業の段階表)を作るのがポイントで、処遇と連動すると定着にも効きます。
まとめ
特定技能「自動車整備」は、整備人材を安定的に確保できる一方で、準備不足だと申請の差し戻しや運用トラブルにつながりやすい制度です。
まずは「業務内容の一致(整備が主・付随は従)」を軸に、雇用条件・支援体制・協議会対応を先に固め、書類の整合性を取って申請に進むと失敗を減らせます。
受け入れ後は支援の実施と記録を継続し、安全と品質を守りながら段階的に戦力化する運用を作ることが、定着と長期雇用(2号)への近道です。
